このデータベースには、雑誌『キネマ旬報』が戦後の各年に「ベスト・テン」として選んだ映画のうち、戦争と植民地支配の表象がある映画の基本情報が掲載されています。このデータベースは、「戦争と植民地をめぐる和解文化と記憶イメージ」(科学研究費補助金・新学術領域研究「和解学の創成」、2017-2021年、代表:浅野豊美)の研究成果で、早稲田大学特別研究費を経て、2023年以後、「国際先導研究 国際和解学の探求」プロジェクトに継承されています。その目的は、今日の日本社会における「記憶」の全体像を捉え、日本における戦争と植民地支配、そして「和解」の表象を総合的に検討する将来の研究に貢献することにあります。
キネマ旬報社は、「日本映画(ドラマ映画)部門」で737作品(1946年から2018年の間) を、「文化映画(ドキュメンタリー映画)部門」で667作品(1953年から2018年の間)を、戦後の各年に「ベスト・テン」として選んできました。 これらのすべての作品のなかから、ウェブサイト上で公開されている「あらすじ」をもとに、日本が戦争を遂行し植民地支配を行った時代を背景としているドラマ映画110作品とドキュメンタリー映画70作品を、「戦争・植民地映画」としてピックアップしました。このデータベースには掲載されているのは、それらの180作品の基本情報です。
このデータベースでは、映画の題名や監督名などをフリーワード欄に入力すれば、関連情報を検索することができます。また「戦争/植民地の別」、「製作・公開時期(年代)」、「ドラマ/ドキュメンタリーの別」を選択し、該当作品を検索することもできます。このデータベースにおける「戦争/植民地の別」については、詳しくは下記の説明をご参照下さい。
植民地支配あるいはその記憶を主題あるいは文脈としている作品。より具体的には、台湾、朝鮮、樺太、満州という場所に絡む作品であり、植民地の出身者あるいは植民地からの引揚者が登場人物である作品も含めた。沖縄とアイヌに関する作品も「植民地映画」に分類しうるが、このデータベースでは、沖縄に関係する作品は次に述べる「戦争映画」に含めた。アイヌに関係する作品は、戦後のキネ旬ベスト・テン映画に含まれていなかった。
上述のような「植民地映画」の他の「戦争・植民地映画」をすべて「戦争映画」とした。「戦争映画」は、戦闘シーンのある映画に限っていない。典型的には、国家統制が強まり、その後軍部が台頭して日中戦争へと突入する直前までの時代(1920年代から30年代)の日本社会をドラマ化あるいはドキュメンタリー化した作品も含まれている。
いずれか1つに分類し難い作品。日本の戦争と植民地支配が同時代に進行したことが背景にある。
より詳しい説明は、加藤恵美「日本社会における戦争と植民地支配の記憶:戦後キネマ旬報ベスト・テン映画の検討」(浅野豊美編著『和解学叢書6 戦争と植民地をめぐる和解文化と記憶イメージ(仮)』所収、pp.264-295[8章])(近刊)をご参照ください。